アストラルの修行
ある人と、小さい頃の話をしていて、
サチコが夕方の4時半頃になると、
私と妹が主役になるお話を毎日少しづつ聞かせてくれていたことを思い出した。
家の庭が、いつも話の世界の入り口になった。
今思えば、そんなに広い庭ではないのだが、
話の中では、森や草原、木のうろの中の地下世界、空へと旅する気球があった。
だから、私にとって実際に庭に出ることは探検であり、ちょっとドキドキする時間だった。
家の庭にある椿の木に張ってある蜘蛛の巣の話の様子は、
今でも鮮明に思い出せる。
蜘蛛の巣の大きさや形、光の加減や露の輝き
本当に鮮やかな色使いや輝きだった。
そのお話の中のイメージの方が実際の椿の木よりも色鮮やかで鮮明に覚えている。
内側からの光がにじみ出るような様々な緑やピンク。
そして、その周りには肉眼では見たこともないような色の洪水がある。
そんな世界の中、私と妹は数々の冒険をしていく。
ある時には、小さくなって蜘蛛と話し、
ある時には、空を飛んで遠くの国まで旅をした。
[E:clover]
話している最中に、
「これはパスワークだなぁ。魔術の修行みたいだなぁ。」と思うに至り、
アストラルの世界観を知らず知らずに子ども時代に養ってもらっていた事に何とも嬉しくなった。
その時間になるのが待ち遠しく、母が夕食の用意をする前の数分の時間。
薄暗くなっていく部屋に、3人で寄り添い、
「さぁ、目を閉じて。」と言われて目を閉じ、
私たちが、フーッと一息はきおわるタイミングで始まるドキドキ感は今でも私の一部分に残っている。
ゲームもコンピューターもない時代だったからこその贅沢な時間だったなぁ。
[E:clover]
その人と話していると、いつもショウヘイの陰に隠れがちなサチコの存在が
浮かび上がってきて面白い。
もしかしたらサチコは影の大番長かもしれない。