ヒマラヤ 宝珠を納める旅 15
この旅で巡った所は、
本当に素晴らしい所ばかりで、
ムクティナートからも立ち去りがたく。
宿泊客が一人。
となってしまって、
夜、「お湯が出ません〜。」
と、人を捜しにいっても、
真っ暗で、誰の気配も無く、
ただ自分の声と足音だけが響き渡る、
(与那国島の宿泊を再現するような。
ヒッチコックの映画の主人公になってしまったような。)
ジョムソンのホテルからも、
立ち去りがたく。
なぜなら、人気のないホテルで明かりはロウソクと月明かり。
その背景に、しっとりとしたニルギリが目の前にそびえ立ち、
生きている気配を持つものは、
私とニルギリしかないような錯覚にとらわれると同時に、
自分がニルギリの中に抱かれていくような心地で、
眠りにつく事の出来る、
夢のような時間。
そんな時間が存在するのです。
そして、まだ夜が開ける前に目覚め、
ゆっくりと漆黒の中に満天の星が輝く世界から
若々しい光がどこかから現れ始め、
新たな色で空を染めていく様子を
誰もいない空間で味わっていると、
自分の呼吸がこの大いなる世界に影響を及ぼしてしまいそうで、
思わず息をする事をためらってしまうような、
神聖なる世界との繋がりを感じるのです。
日程表を持っていない私は、
「移動したくない。」
と、ゴネルのでした。