ヒマラヤ 宝珠を納める旅 44
ヒマラヤの静寂の中で過ごす日々も、
そろそろおしまい。
カトマンズに帰らねばなりません。
ホテルからは、またまた山道を降ります。
下りだから、歩くのは少し楽です。
山を下りる途中で、
インド系の村の方々とすれ違います。
「インド占星術ができるんだよ。」
と、仰るお爺さん。
制服を着て、学校へ向う子ども達。
こうして歩いていると、
そうした楽しい出会いがあります。
「スーツケースは、後から運びます。」
と言う事なので、
山の麓で待っていました。
25キロもあるスーツケースですから、
勿論、強健な男性が運んでくれると思いきや、
赤いスーツケースを背負い山道を降りてきたのは、
色鮮やかなサリーに身を包んだ女性でした。
私は、本当に申し訳なく、
「あぁ、どうしよう。」
と、心配していると、
ビルさんは、
「仕事がもらえて、喜んでいますよ。」
との事。
(慣れたくもないけれども。)
どうしようもない無力感に襲われます。
せめてもの思いで、
チップを手渡すと、
本当に美しい瞳で、
「ありがとう。」
と言って、また山道を登っていかれました。