イシスの息吹

since 2014-06-27 / Copyright 2014. 山本ユキAll Rights Reserved. ブログ・イシスの息吹及び裏・イシスの息吹の内容を許可なく転載・転用することを禁じます ブログのリンクはその限りではありません

小さな幸せ

仕事帰りに、渋谷から電車に乗った。 ギュウギュウ詰めが嫌だから一台待って座った。 発車間際になって、薬の袋を持った80代と思しき おじいさんとおばあさんが駆け込んできた。 ちょっと離れていたけれど「どうぞ」と席を譲った。 おじいさんが座った。 おばあさんの前には、「中学一年生になりました。」と絵に描いたような女の子が 大きな荷物を二つ持って座っていた。 数秒間 あたりにはその子の中の葛藤する思いがエネルギーとなって伝わってきた。 「どうぞ」とその子がおばあさんに席を譲った。 満員でギシギシしていたそのあたりのエネルギーがフッと和らぎ、それまで無表情だった 周りの人たちが微笑みだした。 隣のインド人っぽい男性も。 OLも。 みんな。。。 おばあさんは「荷物が沢山あるんだから、いいわよ。」と言ったが、女の子は「イイエ、いいんです。」と言って荷物を肩にかけた。まだ、饒舌に語れない不器用さが より一層、暖かい何かを運んでくれた。 途中、おじいさんとおばあさんは、お礼を言いながら降りていった。 二つ席が空いたので、「荷物が沢山あるのだから、座れば?」と勧めると、はにかみながら「いいです。。」と言って首を振る。 そこに、後から乗ってきた若い女性がスッとこしかけ、化粧を始めた。 女の子は女性を見つめていた。 

降車駅に着き、女の子と目があった。 お互いに笑みが浮かぶ。 私は、改札に向かった。 少し先で、女の子がブラブラ歩いていた。 「乗り換えるのかしら?」と思ったら、振り向いて、また目があった。 微笑みあいながら会釈した。 足取り軽く女の子は次のホームへと歩いていった。  重い荷物によって乱れたポニーテイルとジャケットがより一層、彼女を彼女らしく見せていた。

その子が、周りの私たち大人の心を少し溶かし、張り付いた無表情を笑みに変えたことに気づく日が来るのかなー? 二度と会えないかもしれないけれども、ほんの短い時間だったけれども、素敵な時間だった。

山本ユキHP