トウキョウ 死者の書 9
テレパシー能力は退化したけれど、
スマホを使って遠くの人と瞬時に繋がれるようになり、
見えない次元移動が出来なくても、
こうして向こう側の世界を誰でも垣間見ることができるようになった。
私たちの身体とエネルギーの境界線はどんどん曖昧になり、
見えない世界の質感や共通言語は、
ビジネスの世界で通用するようになっている。
何かがそれを押しとどめようとしても、
すでに流れができている。
そして、特別なものではなくなっている。
もしかすると、数年先には、
死後の世界がここに映し出され、
故人と当たり前に会話できるような日が訪れないとも限らない。
私たちの中で、
「それはないでしょ」
という固定概念は、
私たちの能力を最も低く見積もり、
ものに縛り付ける。
しかし、
携帯電話やスカイプで会話することは便利であっても、
孤独は拭えず、自らを変えることはできない。
この異次元の世界を生活に取り入れたとしても、
心の闇を無くしてはくれない。
手軽な便利さは自らに鎧を作り麻痺させる方向に向かいがちだ。
本来私たちが持つこの世界にたどり着くには、
自己の透明化が必要だから。
自らが使う側になるのか、
使われる側になるのかは、
自らの透明化の有無なしにはありえない。